心室中隔欠損 (VSD)

右心室と左心室の間の壁に穴があいている。

右心室と左心室をわけている壁に穴があいている病気です。
しかし、この穴だけでは、けっこう大きな穴があいていても、チアノ−ゼはでませんし、顔色はたいてい良好です。

それは、血液が、圧の高い左心室から、圧の低い右心室に向かってしか、流れないからです。ですから、大動脈に黒い血が混じることはありません。それで、

「うちの子は心臓病だといわれたけど、顔色はいいし、元気そうだ。どこが悪いんだ」という感じになります。

この病気で何が一番の問題か、それは肺に血がいっぱい流れてしまうというところです。つまり、穴が大きければ大きいほど、肺に血がたくさん流れて、息がしんどくなるのです。

穴が小さいと、全然症状が出ず、一生無症状のままで過ごす人もいます。しかし穴が大きいと、生まれて数日で息がしんどくなってくる子もいます。

穴の大きさによっては、体に流れる血液量の2倍も3倍も血液が、肺に流れることもあります。しかも、左心室という体全体に血を送り出すための強いポンプから肺に血液が押し込まれるために、肺がどんどん傷んでくるのです。

心臓自体にも負担がかかります。体に血を送ろうとして、左心室は一生懸命頑張りますが、頑張っても頑張っても血液は肺と心臓の間をぐるぐる回るだけの空回り状態です。これは、車で例えれば、ニュートラルでエンジンの空ぶかしをしているようなものです。エンジンをどんなにふかしても車は前に進まず、しまいにオーバーヒートしてしまう、ような状態です。

この病気は生まれて数日で心雑音が聞こえることが多いので、早く見つかることが多い病気です。こういう場合見つかったとき全然症状がなくても、「3カ月くらいまでは注意が必要です」と医者に説明されることが多いと思います。

これは、赤ちゃんの肺が生まれてすぐはとても硬いために、穴が大きくても、あまり肺に流れ込まず、息がしんどくならないことがあるためです。大体3カ月くらいで肺は柔らかくなります。肺が柔らかくなっても症状が出なければ、重症ではないだろうと判断できるわけです。

生まれて3カ月の間にしんどくなる赤ちゃんの症状は、ミルクの後など、胸を上下させてハーハー息をするとか、すごく汗をかくとか、ひどくなるとミルクを1回に50-60mlくらいしか飲めなくなるといったものです。よくぐずる、横になって寝れない、というのも症状の一つです。こうなると、体重も増えなくなってしまいます。

こういう場合はまず、肺が少しでも水っぽくならないように利尿剤というおしっこをだすお薬を飲んだり、ジゴシンなどの強心剤を飲んで、オーバーヒートしかかった心臓に、てこ入れしながら、なんとかしのごうとします。それでもだめなときは手術になります。2カ月から6カ月くらいで手術が必要になってくる子は、心室中隔欠損の中でも重症のタイプです。

この場合、一気に心臓の中の穴をふさぐ方法もありますが、これをするためには心臓をいったん止めて、大きな手術をしなければなりません。赤ちゃんの状態があまりよくないとか、極端に体重が小さい、など無理はしない方がいいというときは、とりあえずの応急処置として、肺動脈絞扼術という手術もあります。肺に血が流れすぎてしんどいわけですから、肺に血があまり流れないよう、少し縛ってしまえというわけです。とりあえずの応急処置です。

肺に流れる血流が減れば、赤ちゃんは呼吸も楽になるし、ミルクも飲むようになって体重は増え始めます。ある程度体重が増えて体力もついたところをみはからって、もう一度手術をして穴をふさいで、縛っていた肺動脈を元に戻す、ということになります。

次は、穴が小さめで症状がない子供の話です。この場合、穴の大きさとあいている場所が問題になります。

穴が中くらいに大きくて、赤ちゃんの時手術をするほどではなかった人も、たとえば肺に、体の2倍の血が流れ続けていれば、いつかは肺が痛んでしまいます。たとえば大人になって痛んで初めて、階段が上れなくなったり、息がすぐあがったりと症状が出てくるわけですが、症状が出てから穴をふさぐ手術をしても、痛んだ肺は簡単には元に戻りません。ですから、将来肺が痛みそうだなという中くらいの穴の場合は、2,3歳から5歳くらいの間に手術で穴をふさぎます。

もっと小さな穴の場合、たいていは、何もせずにほっておきます。

穴の場所によっては、小学校に入るまでの間にふさがってしまうこともあります。

ただし、穴が大動脈弁の近くにあいている時だけは要注意です。これは、専門的には「心室中隔欠損1型」と呼ばれています。

大動脈弁の真下に穴があいていると、大動脈弁が穴にずり落ちてきて、弁がゆがんでしまいます。

弁がゆがんで漏れ始めると、大動脈弁逆流という、また別の病気になってしまうのです。
大動脈弁の漏れがひどくなると、左心室と大動脈の間で血がいったりきたりするだけで、体に血液が行かなくなります。これは、放っておくと命に関わります。
こうなってからでは、穴をふさぐ手術をしても大動脈弁のゆがみはとれず、弁も人工弁にかえなければいけなくなり、たいへんです。

ですから、穴が大動脈弁の真下にあいていて、弁がゆがんで漏れ始めた場合は、手術をした方がよい、ということになっています。

この場合など、子供は普通の子と全くかわりなく、元気いっぱいで、なんでこんなに元気なのに手術を受けなければならないんだ、ということになるわけですが、将来手遅れになる前に手術で治しておこう、という考え方で手術が行われています。


感染性心内膜炎

最後に心臓に穴があいたままで一生を送る人の場合、日常生活には何ら支障はないのですが、唯一、気をつけなければいけないと医者に言われることがあります。

それは、「感染性心内膜炎」の予防です。歯を抜いたときや、口の中に出血したとき、大きな怪我をしたときなど、出血した場所から体の中に細菌が入ってしまうことがあります。通常はそのまま肺に流れて、そこで免疫でやっつけられてしまいます。しかし、心臓に小さな穴があいていると、そこに渦ができたり、心臓の中の内側の粘膜に小さな傷ができていたりして、そこに細菌が住み着いてしまうことがあるのです。

一度細菌が住み着いてしまうと、増殖してきてキノコのように大きくなったりします。ここから体中に細菌がばらまかれ、原因不明の発熱が続きます。この病気を感染性心内膜炎といいます。

これは重症の病気です。一度なってしまうと、治すのに数ヶ月の入院治療を要します。場合によっては開胸手術して、心臓を止めて、細菌の塊を取り除くことさえあります。

重症の心臓の感染症ですから、さぞや症状は重篤なのだろうと思われるでしょうが、実際はあまり重症感がないことも多いのがこの病気の特徴です。37度台の微熱が続き、咳や鼻水はなく、顔色がなんとなく青白い、なんとなくしんどそう、という感じになります。近所のお医者さんで風邪だと言われて、抗生剤を飲むと熱が下がり、治ったと思って抗生剤を飲むのを止めるとまた微熱が出る、といった事を1カ月くらい繰り返して、やっと見つかったりします。ですから「こういう病気がある」ということを知っておくことは、親にとっても本人にとっても重要です。微熱がだらだらと続いた時に、もしかしたら、と思えれば、発見を速めることができます。

怖いことばかり書いてきましたが、この病気は予防できる病気です。歯の治療をするときや、大きな怪我をしたとき、口の中に出血したとき、アトピーの子などで皮膚が膿んだとき、などは予防的に抗生剤を飲みます。医者の指示通り、数回から数日飲んでいれば、まず心配はいりません。

統計的なことをいうと、心室中隔で小さな穴があいたままの人の場合、千人中一人か二人に発症する、とされています。

むやみに恐がる心配はないと思いますが、感染性心内膜炎という病気に対する知識と、予防が必要だという気持ちは、両親、そして本人にも持っていて欲しいと思います。


 

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